2012年2月13日月曜日

谷内正太郎、高橋昌之著「外交の戦略と志―前外務事務次官谷内正太郎は語る―」産経新聞出版社2009 年4 月26 日刊を読む

外交の戦略と志―前外務事務次官谷内正太郎は語る―

1.外交の基本は国益追求

(1)40 年間、基本的に自分が考えていた問題意識はそんなに変わっていない。

第1 に、外交の基本は国際舞台で国益を追求することだということだ。

ただし、自国だけ良ければいいという近視眼的なやり方では、国益を守るつもりでも守れないし、伸ばすものも伸ばせない。
国際公益との整合性を保ちながら、国益を追求することが基本だ。

英語では「エンライトンド・セルフインタレスト」、つまり「啓かれた利益の追求」と言ったりする。

さらにいえば、国益の中核にあるのは安全保障であり、安全保障とは突き詰めれば「国民の生命と財産を守る」ことだ。
そこが大事という問題意識は変わっていない。


(2)第2 に、先にちょっと触れたが、外務省の宿弊である「事なかれ主義」を、打破しなければならないということだった。

日本がまだ国力がそれほどなかったときは、事なかれ主義で、頭を低くして、トラブルには首を突っ込まない、余計なことはしない、受け身でいいということでよかったと思うが、今やそれは許されない。許されなくなって、もう長いこと経つと思う。

国家が発展し、国力が増大すれば、それに伴って国際的な責任も増え、期待も高まる。
その国家がさらに「大国」として成長するには、国際的な関わりを増強する必要がある。

国民はその動きを支持し、自らも参加し、さらには外国から一定の敬意を受けたいと思うようになる。
それを可能にするのは事なかれ主義ではなく、積極主義である。

私が次官になって訴えたのは「攻めの外交」であった。

時には大胆な決断をし、世界史の創造に積極的に関わっていく、歴史を切り開いていくという気概も必要だ。

それと同時に、日本は外交の基本の一貫性、継続性を守っていくことも重要だ。

米ソ冷戦崩壊後の1990 年代、いわゆる「失われた10 年」の間、日本では7 人の首相が登場し、その度、外国人からは「首相が代わったら外交政策は変わるのか」ということをよく聞かれた。
そのときに私は「首相が代わったからといって国益まで変わるわけではないのだから、外交の基本的方向は一貫性をもって継続される」と答えてきた。
だから、「政治」がいかに変わろうとも、その一貫性を保つということが、外交事務当局の重要な存在理由にもなっている。

第3 にますます重要性を増しているのは、「国民とともに歩む外交」という視点である。
外務省はよく目線が高いとか、国民から遊離していると言われてきた。
他国でもこのような外務省批判はよく聞くところだが、拉致問題が注目されてからは、特にわれわれが心がけなくてはいけないことだと痛感している。



2.責任はすべてとる
(1)私は外務事務次官に就任するにあたり、国民に信頼される外務省にしたいと強く思った。

私自身は仕事をするときは7 割か8 割の力を出して、残りは温存しておいて、緊急事態に使えるようにしたいと思いたがる性質なのだが、次官になったときはともかく一球一球をおろそかにせず、全力投球でいこうと思った。

勝海舟の言葉に「事いまだ成らず小心翼々事まさに成らんとす大胆不敵事すでに成る油断大敵」というものがある。

(2)心がけようとしたのがそれで、外交政策に取り組むにあたって、準備するときは小心翼々、つまりどんな問題点があるんだろうか、どんな反応があるだろうかということを真剣かつ慎重に検討する。
ここが勝負所だというときは大胆不敵に決断し、実行する。

事すでに成ったときは勝って兜の尾を締める、油断大敵の心構えである。

仮にうまくいかなかったときは、責任をとるという覚悟でやってきた。


(3)ただ、次官は事務当局の最高責任者だから、目を吊り上げて髪を振り乱してという姿は、部下を当惑させ、不安がらせるだけなので、余裕のあるような態度をとるようにはしていた。

しかし、次官をやること自体が自分にとっては勝負所だったので、実際はただただ一生懸命だった。


(4)最初の頃は信頼しているある部下から
「外務省員は次官をクールな目で見てますよ。お手並み拝見という感じです」
と言われた。

自分ではまず自分自身が意欲を持って仕事に取り組み、外務省全体の責任はすべて自分がとるということ以外にないと思っていた。

(5)だから平成17 年1 月4 日に次官に就任した際、全省員に対するあいさつの中で
「事務当局の最高責任者としてみなさんがやったことについてはすべて責任はとります。
その覚悟でここに立っているつもりです。
一緒に頑張ってやっていきたいと思います。」
と言った。

それをずっと心がけてきたつもりで、段々とみんなが意欲的になってきた、省内が明るくなってきたという印象があった。

そういう意味で自分が心がけてきたことを、みんなが理解してくれてよく頑張ってくれたと思う。

外交官は国益のために自分の将来を計算に入れずに仕事をしなければならない。
いろいろと心ない批判を受けることがあっても、「恐れず、めげず、屈せず」に「しなやかに、したたかに、信念を持って」仕事をすべきだ。
P24 ~ 27


[コメント]
外交の基本は国家の安全保障との使命を明確に自覚して、日本の外交官のリーダー役を果たされた谷内氏の本著は、動揺に次ぐ動揺を重ねる近時の日本外交に一定の方向を与えるものでとても参考になる。
外交官だけでなく企業や行政のリーダー論としても大いに学ばせて頂きたいと考える。


- 2011 年1 月2 日林明夫記-

2012年2月8日水曜日

栃木県に国際競争力を

CRT 栃木放送『開倫塾の時間』2010 年4 月17 日(土)放送内容資料


1.はじめに

おはようございます。

開倫塾塾長の林明夫です。

今朝も「開倫塾の時間」をお聴きいただき、ありがとうございます。

この「開倫塾の時間」では、私がいろいろと勉強させていただいたことや勉強の仕方についてお話をさせていただいています。

今週の水曜日、2010 年4 月14 日に、読売新聞・とちぎ版の「とちぎ寸言」というコラムに原稿を書かせていただきましたので、今日はその内容を紹介させていただきます。



2.現在は、大変な円高で輸出不振に陥り、また、消費の低迷で消費者がものやサービスを買わなくなり、栃木県の経済の活力が失われつつあるのではないかという認識を私は持っています。

おそらく皆様の中にも同じように感じていらっしゃる方も多いのではないかと思います。



3.では、これを解決するにはどうしたらよいでしょうか。

私は、1 つの方法として、各企業・栃木県・各市町・各地域が国際競争力を徹底的に身につけることで、この危機を乗り切っていけるのではないかと考えています。



4.なぜ国際競争力を身につけることが大事か。

栃木県には、とちおとめなどの農作物の県産品・工業製品の県産品などが数多くあります。

それら栃木県で作ったものをこれからは海外で販売する必要があるからです。

そして、それが栃木県の発展には不可欠だからです。



5.加えて、外国から訪れる観光客の誘致も、栃木県の発展のためには不可欠であると思います。



6.皆様もご存知だと思いますが、栃木県の経済は、自動車の輸出をはじめとする最先端の輸出型の製造業によってリード(牽引)されています。

ですから、国際競争力をつけることが、栃木県の経済危機を切り抜ける1 つの方法ではないかと私は考えているのです。



7.国際競争力強化のために必要なことの1 つめは、栃木県の第2 公用語を英語にすることであると思います。

公用語とは、公(おおやけ)の場で用いられる言語のことをいいます。

栃木県の公用語はもちろん日本語ですが、第2 公用語として英語を用いることが最も大切ではないかと思います。

英語を第2 公用語にするためには、栃木県全体を国際競争力強化のための特区、つまり国際化特区にすることだと思います。

その上で、行政の申請の大半を英語でできるようにすると、外国人の方にとっては大変便利です。

栃木県に外国の人が住んだり、経済活動や様々な社会活動を展開する大きな契機、きっかけとなります。

日本語のみの申請しか受け付けないのでは、栃木県に来る人も増えなければ、栃木県で仕事や経済活動をする人も増えません。

相手の立場に立ってものごとを考えることが大事なのに、日本語だけを使うことは外国の人にとって不親切の極みと言えます。

自分がされて困ることは相手にもしない。

これが大事です。

役所は、日本語だけの世界から一日も早く脱却をすること。

そうでなければ国際化はありえません。

日本の将来も栃木県の将来もありません。



8.次に、県内のすべての標示を英語でも行うことが大事です。

既に道路標識などは英語でかなり標示されていますが、そのほかの標識も日本語と英語(ローマ字)の両方で標示するとよいと思います。

また、企業やNPO などには、社名や組織名を英語でも表記していただき、仕事の内容や活動内容を少しでも英語で書いていただくようにすると、日本語の読めない方にはとても便利になります。



9.最終的には、すべての行政サービス・公共サービス、更に加えれば、民間のサービスを日本語だけではなく英語でも提供できるようになればよいと思います。

これが、国際化を図る上で一番大切なことです。



10.そのためにはどうしたらよいかを、次にお話します。

小学校から大学院まで英語の授業がたくさんありますが、それらの授業をすべて英語で行うことが基本中の基本です。

現在行われている英語の授業を日本語で行う形では、なかなか英語が身につきません。

ですから、栃木県内にあるすべての小学校・中学校・高等学校・専修学校・専門学校・大学・大学院では、英語の授業はすべて英語で行うようにすべきです。

できれば、幼稚園での英語の授業も英語で行うとよいと思います。

そうすれば、英語でのコミュニケーション能力が高まります。



11.また、役所で働く公務員はもちろんのこと、小売業やサービス業に従事する方々、

例えばタクシーやバスの運転手さん、コンビニエンスストアで働く方、病院で働く方も大変だと考えず、

自分の未来は自分で切り開くと考え、英語によるコミュニケーション能力を徹底的に身につけることも大事です。



12.さらに、県内のテレビ・ラジオ放送、新聞、ミニコミ誌などにもできるだけ英語のコーナーを設けていただきコミュニケーションを図ると、国際競争力の強化に役立つのではないかと思います。



13.国際競争力強化のために為すべきことの2 つめは、自分の住む町の改善点を十分に自覚することだと思います。

例えば、空き地が山ほどあるのに、起業家を育成したり企業を誘致したりするしくみがうまく機能していないという問題があります。

このようなときは、日本国内だけでなく世界中に目を向け、成功を収めている実践例から素直に学んで少しずつ取り入れていく必要があると思います。



14.それから、留学生や栃木県で学んだり働いたりしている外国人の方々が栃木県民として活躍できる場づくりも、国際競争力強化のためには大切です。

例えば、足利市にある足利赤十字病院は、フィリピンから看護師さんを迎え入れました。

この看護師さんが定着できるように、地域の人たちや行政が力を合わせて活躍できる場づくりに取り組まなければならないと思います。



15.このように、栃木県の経済を活性化するためには国際競争力を強化する必要があるので、そのために栃木県を国際化特区にしていろいろなことを行ったほうがよいというのが、私の考えです。



16.今日は、2010 年4 月14 日(水)発行の読売新聞・とちぎ版の「とちぎ寸言」に書かせていただいた内容について紹介させていただきました。

皆様はどのようにお考えでしょうか。


― 2011 年5 月12 日訂正、追記、林明夫―

2012年2月6日月曜日

練習は不可能を可能にする

Q:「練習は不可能を可能にする」とは何ですか。


A:(林明夫。以下略)慶應義塾の塾長をつとめられた小泉信三先生が、テニスをはじめスポーツをすけいおうぎじゆくこいずみしんぞうることで得られる、身につくものの1 つとして教えて下さったものです。

小泉先生は、スポーツをすることで3 つの大切なものが得られるとして、その3 つを「3 つの宝」と名付けられました。



Q:スポーツをやることで得られる「3 つの宝」とは何ですか。


A:(1)1 つは、今御紹介した「練習は不可能を可能にする」という考えです。

(2)今、このドッジボール合宿にお集まりのドッジボール選手の皆様も、ドッジボールを習いたてのころはあまり上手にドッジボールをすることができなかったと思います。

(3)しかし、コーチや監督の先生、先輩やお友達に教えていただきながら練習を積み重ねるあいだに、少しずつドッジボールが身につき、今日のようにドッジボールの試合や合宿ができるまでになったのだと思います。

(4)はじめはドッジボールのことが何もわからなかったのに、いろいろな方の指導のおかげで練
習を積み重ねることによって、試合に出場するまでになる。
はじめは不可能であったことが、練習によって可能になる。
これを知り、身につけることがスポーツの素晴らしさです。

(5)このことを、この「練習は不可能を可能にする」ということばは教えてくれます。




Q:3 つの宝」の2 つ目は何ですか。
A:(1)スポーツをすることで得られる、身につくものの2 つ目の宝は、「フェアプレイ」だと小泉信三先生は教えて下さいました。

(2)どのようなスポーツにもしてよいこととしてはいけないこと、ルールがあります。

(3)いやしいプレイをしてはいけない、ルールに反したプレイをしてはいけない。正々堂々胸を
張ってプレイをする、ルールをよく守ってプレイをすることが、どんなスポーツでも大事です。

(4)学校生活や、家庭や社会で生活するときも同じで、やってよいことよくないことは何か、学校や家庭、社会のルールをよく知り、「フェアプレイ」の考えでものごとを行うことが大事です。

(5)この「フェアプレイ」の考えが身につくのがスポーツであることを、小泉信三先生は教えて下さいました。




Q:「3 つの宝」の3 つ目は何ですか。


A:(1)「よき友」です。

(2)私は中学生のときに柔道を習ったのですが、監督の椎名弘先生から「練習で泣いて試合で笑え」と教えられ、厳しく鍛えられました。

(3)そのおかげで少しずつ柔道が身についていきましたが、それは厳しい練習でした。

(4)ただ、厳しく感じていたのは私だけでなく、いっしょに練習をした私の友達も同じく厳しく感じていたようです。

(5)厳しい監督の指導のもとで、力を合わせて練習をし、試合に出掛け、泣いたり笑ったりしているうちに、少しずつ皆仲良くなり友達になりました。

(6)これは、ドッジボールをしている皆様も同じだと思います。

(7)これが、スポーツをして得られる「3 つの宝」の3 番目の「よき友」の意味だと私は思います。
皆様はどうお考えですか。



Q:スポーツで得られるこの「3 つの宝」は、勉強にもあてはまるのですか。


A:(1)はい、3 つともあてはまると思います。
テストをやっているときは、人の答案を見るカンニングをしてはいけないなど、
テストのきまり、ルール通りにやらなければいけないので、「フェアプレイ」は勉強にもあてはまります。

(2)いっしょに勉強をしているとお友達もできますので、「よき友」も勉強にあてはまります。

(3)「練習は不可能を可能にする」は、勉強に一番あてはまるかもしれません。




Q:「練習は不可能を可能にする」は、どう勉強にあてはまるのですか。少し詳しく説明して下さい。



A:(1)勉強するときに一番大切なのは、先生の授業を聞いたり、本を自分で読んだりして「うんなるほど」「これはこういうことなのか」と「よくわかる」ことです。
これを「理解」といいます。

(2)一度「うんなるほど」と「よくわかった」あと、つまり「理解」したあと、次に大切なのは、それを身につけることです。
一度「うんなるほど」と「理解」したことを身につけることを、「定着」といいます。

(3)この「身につける」(「定着」)のときに大事なのが、3 つの練習です。



Q:えっ、勉強にも「3 つの練習」があるのですか。


A:はい。私は一度「うんなるほど」と「理解」したことを身につけるための練習に「定着のための三大練習」(3 つの大きな練習)と名付けました。




Q:「定着のための三大練習」とは何ですか。1 つ1 つ説明して下さい。

A:(1)1 つは「音読練習」です。

(2)「音読」とは、一度「うんなるほど」とよく「理解」した教科書やノート、プリントや参考書を大きな声を出してよく読むことです。

(3)何回も何十回も声を出して読む「音読練習」をして、今まで勉強したことを「スミからスミまで一語のこらず覚えてしまい、何も見ないでスラスラ口をついて言えるまでにする」。
これが大事です。

(4)そのためには、「声を出して読む練習」、「音読練習」は役に立ちます「練習は不可能を可能にする」のです。




Q 2つ目の練習は何ですか。


A (1)「書き取り練習」です。

(2)「音読練習」をして、教科書に書いてあることなどが「何も見ないでスラスラ言えるようになった」ら、それを紙に書いてみる。

書いてみて、正確に書けない「ことば」があったら、正確に書けるようになるまで、何回も何回も書く練習をする。

(3)これが「書き取り練習」です。




Q 3つ目の練習は何ですか。


A (1)「計算・問題練習」です。

(2)教科書や問題集に出ている計算や問題の答えが、なぜそのような答えになったのか「うんなるほど」とよく「理解」できたら、次にどうしたらよいのか。

例えば、5 + 8 = 13、7 × 8 = 56
などは、なぜ5 に8 をたすと13 になるのか、なぜ7 に8 をかけると56 になるのかと「うんなるほど」とよく「理解」できたらどうするか。

(3)計算や問題を見た瞬間にパッ、パッ、パッと正しい答えが出るようになるまで、何回も何十回も練習をすることです。これを「計算・問題練習」といいます。




Q そうですか。


A (1)はい。このように、一度「うんなるほど」と「理解」したものを自分のものとして身につける、「定着」させるには、3 つの大切な練習、つまり「定着のための三大練習」があります。

(2)この「定着のための3大練習」を熱心に行えば行うほど、勉強がよく身につきます。
学校のテストでどんな科目でもよい点数、100 点が取れるようになります。

(3)「練習は不可能を可能にする」。このことばは、勉強にもあてはまります。




Q 最後に一言どうぞ。


A 学力の高い人、成績のよい人は次のような人です。

(1)よく本や新聞を読む人
1.学校の教科書に出ていたり先生が紹介して下さったような本をじっくりゆっくり読むと、思慮深さが身につきます。
読んでいて「いいな」と思った文はノートに書き抜いて、何回も読み返して自分のものにしましょう。

2.新聞は毎日必ず読みましょう。新聞を毎日じっくり読むと、世の中のことがよくわかってきます。
自分で考える力が身につきます。ことばの数がどんどん増えます。

3.本や新聞を読んでいてわからない「ことば」があったら、必ず「辞書」を引きましょう。辞書で調べたことは必ず「ノート」に「メモ」をし、その「ノート」はいつも1 ページ目から「音読練習」と「書き取り練習」をしましょう。

4. 1 日に10 個、新しい「ことば」を辞書で調べ、コツコツと「音読練習」と「書き取り練習」を繰り返して身につければ、1 年は365 日ですから、1 年間で365 × 10 = 3650、3 年間で1 万以上の「ことば」が身につきます。
小さな積み重ねは大切な力となります。
「練習は不可能を可能にします」


(2)学力の高い人は勉強の仕方をよく身につけています。
1.学校で先生の授業をよく聞き、「うんなるほど」とよく「理解」することに全力を傾けています。

2.わからない「ことば」はどんどん辞書を引いて調べ、調べたことをノートにメモし、よく読み、よく書き、身につける努力をします。

3.授業中、大切なことはよくノートを取ります。
取ったノートを何回も何回もよく読み、よく書き、身につける努力をします。

4.授業が終わったあと、一度「うんなるほど」とよく「理解」したことを繰り返し声を出して読み、書く練習、計算や問題練習をします。
スミからスミまでよく身につけてしまいます。


(3)「練習は不可能を可能にする」
このことばは、ドッジボールはじめスポーツにも、勉強にもあてはまります。
スポーツに勉強にがんばって下さいね。



お話をお聴きいただき感謝します。

練習は不可能を可能にする

Q:「練習は不可能を可能にする」とは何ですか。


A:(林明夫。以下略)慶應義塾の塾長をつとめられた小泉信三先生が、テニスをはじめスポーツをすけいおうぎじゆくこいずみしんぞうることで得られる、身につくものの1 つとして教えて下さったものです。

小泉先生は、スポーツをすることで3 つの大切なものが得られるとして、その3 つを「3 つの宝」と名付けられました。



Q:スポーツをやることで得られる「3 つの宝」とは何ですか。


A:(1)1 つは、今御紹介した「練習は不可能を可能にする」という考えです。

(2)今、このドッジボール合宿にお集まりのドッジボール選手の皆様も、ドッジボールを習いたてのころはあまり上手にドッジボールをすることができなかったと思います。

(3)しかし、コーチや監督の先生、先輩やお友達に教えていただきながら練習を積み重ねるあいだに、少しずつドッジボールが身につき、今日のようにドッジボールの試合や合宿ができるまでになったのだと思います。

(4)はじめはドッジボールのことが何もわからなかったのに、いろいろな方の指導のおかげで練
習を積み重ねることによって、試合に出場するまでになる。
はじめは不可能であったことが、練習によって可能になる。
これを知り、身につけることがスポーツの素晴らしさです。

(5)このことを、この「練習は不可能を可能にする」ということばは教えてくれます。




Q:3 つの宝」の2 つ目は何ですか。
A:(1)スポーツをすることで得られる、身につくものの2 つ目の宝は、「フェアプレイ」だと小泉信三先生は教えて下さいました。

(2)どのようなスポーツにもしてよいこととしてはいけないこと、ルールがあります。

(3)いやしいプレイをしてはいけない、ルールに反したプレイをしてはいけない。正々堂々胸を
張ってプレイをする、ルールをよく守ってプレイをすることが、どんなスポーツでも大事です。

(4)学校生活や、家庭や社会で生活するときも同じで、やってよいことよくないことは何か、学校や家庭、社会のルールをよく知り、「フェアプレイ」の考えでものごとを行うことが大事です。

(5)この「フェアプレイ」の考えが身につくのがスポーツであることを、小泉信三先生は教えて下さいました。




Q:「3 つの宝」の3 つ目は何ですか。


A:(1)「よき友」です。

(2)私は中学生のときに柔道を習ったのですが、監督の椎名弘先生から「練習で泣いて試合で笑え」と教えられ、厳しく鍛えられました。

(3)そのおかげで少しずつ柔道が身についていきましたが、それは厳しい練習でした。

(4)ただ、厳しく感じていたのは私だけでなく、いっしょに練習をした私の友達も同じく厳しく感じていたようです。

(5)厳しい監督の指導のもとで、力を合わせて練習をし、試合に出掛け、泣いたり笑ったりしているうちに、少しずつ皆仲良くなり友達になりました。

(6)これは、ドッジボールをしている皆様も同じだと思います。

(7)これが、スポーツをして得られる「3 つの宝」の3 番目の「よき友」の意味だと私は思います。
皆様はどうお考えですか。



Q:スポーツで得られるこの「3 つの宝」は、勉強にもあてはまるのですか。


A:(1)はい、3 つともあてはまると思います。
テストをやっているときは、人の答案を見るカンニングをしてはいけないなど、
テストのきまり、ルール通りにやらなければいけないので、「フェアプレイ」は勉強にもあてはまります。

(2)いっしょに勉強をしているとお友達もできますので、「よき友」も勉強にあてはまります。

(3)「練習は不可能を可能にする」は、勉強に一番あてはまるかもしれません。




Q:「練習は不可能を可能にする」は、どう勉強にあてはまるのですか。少し詳しく説明して下さい。



A:(1)勉強するときに一番大切なのは、先生の授業を聞いたり、本を自分で読んだりして「うんなるほど」「これはこういうことなのか」と「よくわかる」ことです。
これを「理解」といいます。

(2)一度「うんなるほど」と「よくわかった」あと、つまり「理解」したあと、次に大切なのは、それを身につけることです。
一度「うんなるほど」と「理解」したことを身につけることを、「定着」といいます。

(3)この「身につける」(「定着」)のときに大事なのが、3 つの練習です。



Q:えっ、勉強にも「3 つの練習」があるのですか。


A:はい。私は一度「うんなるほど」と「理解」したことを身につけるための練習に「定着のための三大練習」(3 つの大きな練習)と名付けました。




Q:「定着のための三大練習」とは何ですか。1 つ1 つ説明して下さい。

A:(1)1 つは「音読練習」です。

(2)「音読」とは、一度「うんなるほど」とよく「理解」した教科書やノート、プリントや参考書を大きな声を出してよく読むことです。

(3)何回も何十回も声を出して読む「音読練習」をして、今まで勉強したことを「スミからスミまで一語のこらず覚えてしまい、何も見ないでスラスラ口をついて言えるまでにする」。
これが大事です。

(4)そのためには、「声を出して読む練習」、「音読練習」は役に立ちます「練習は不可能を可能にする」のです。




Q 2つ目の練習は何ですか。


A (1)「書き取り練習」です。

(2)「音読練習」をして、教科書に書いてあることなどが「何も見ないでスラスラ言えるようになった」ら、それを紙に書いてみる。

書いてみて、正確に書けない「ことば」があったら、正確に書けるようになるまで、何回も何回も書く練習をする。

(3)これが「書き取り練習」です。




Q 3つ目の練習は何ですか。


A (1)「計算・問題練習」です。

(2)教科書や問題集に出ている計算や問題の答えが、なぜそのような答えになったのか「うんなるほど」とよく「理解」できたら、次にどうしたらよいのか。

例えば、5 + 8 = 13、7 × 8 = 56
などは、なぜ5 に8 をたすと13 になるのか、なぜ7 に8 をかけると56 になるのかと「うんなるほど」とよく「理解」できたらどうするか。

(3)計算や問題を見た瞬間にパッ、パッ、パッと正しい答えが出るようになるまで、何回も何十回も練習をすることです。これを「計算・問題練習」といいます。




Q そうですか。


A (1)はい。このように、一度「うんなるほど」と「理解」したものを自分のものとして身につける、「定着」させるには、3 つの大切な練習、つまり「定着のための三大練習」があります。

(2)この「定着のための3大練習」を熱心に行えば行うほど、勉強がよく身につきます。
学校のテストでどんな科目でもよい点数、100 点が取れるようになります。

(3)「練習は不可能を可能にする」。このことばは、勉強にもあてはまります。




Q 最後に一言どうぞ。


A 学力の高い人、成績のよい人は次のような人です。

(1)よく本や新聞を読む人
1.学校の教科書に出ていたり先生が紹介して下さったような本をじっくりゆっくり読むと、思慮深さが身につきます。
読んでいて「いいな」と思った文はノートに書き抜いて、何回も読み返して自分のものにしましょう。

2.新聞は毎日必ず読みましょう。新聞を毎日じっくり読むと、世の中のことがよくわかってきます。
自分で考える力が身につきます。ことばの数がどんどん増えます。

3.本や新聞を読んでいてわからない「ことば」があったら、必ず「辞書」を引きましょう。辞書で調べたことは必ず「ノート」に「メモ」をし、その「ノート」はいつも1 ページ目から「音読練習」と「書き取り練習」をしましょう。

4. 1 日に10 個、新しい「ことば」を辞書で調べ、コツコツと「音読練習」と「書き取り練習」を繰り返して身につければ、1 年は365 日ですから、1 年間で365 × 10 = 3650、3 年間で1 万以上の「ことば」が身につきます。
小さな積み重ねは大切な力となります。
「練習は不可能を可能にします」


(2)学力の高い人は勉強の仕方をよく身につけています。
1.学校で先生の授業をよく聞き、「うんなるほど」とよく「理解」することに全力を傾けています。

2.わからない「ことば」はどんどん辞書を引いて調べ、調べたことをノートにメモし、よく読み、よく書き、身につける努力をします。

3.授業中、大切なことはよくノートを取ります。
取ったノートを何回も何回もよく読み、よく書き、身につける努力をします。

4.授業が終わったあと、一度「うんなるほど」とよく「理解」したことを繰り返し声を出して読み、書く練習、計算や問題練習をします。
スミからスミまでよく身につけてしまいます。


(3)「練習は不可能を可能にする」
このことばは、ドッジボールはじめスポーツにも、勉強にもあてはまります。
スポーツに勉強にがんばって下さいね。



お話をお聴きいただき感謝します。

2012年2月2日木曜日

ピザ(PISA)にからくりなし

中谷好江著「ピザ(PISA)にからくりなし」アピール
産経新聞2011 年1 月12 日刊を読む


1.私どもOECD(経済協力開発機構)が実施している国際学習到達度調査(ピザ)の信憑性を疑う立命館大教授の加地伸行氏のコラム「“ピザ”のからくり」が昨年暮れ(12 月26 日)掲載されました。

ご存じない方もいらっしゃると思いますのでこの機会にピザ(PISA)についてご紹介させていただきます。


2.まずピザの目的は、OECD 加盟34 ヵ国などの15 歳の男女を対象に義務教育終了時の読解力や数学的応用力、科学的応用力などを測定、把握することにあります。


3.調査は、国際センター経由で各国の調査実施機関に委託し、2000 年から3 年ごとに実施しています。


4.調査結果は、国際比較できるよう、企画や問題開発、対象集団の抽出、実施、採点方法などさまざまな順守事項などが定められています。


5.調査対象は、公立/私立、普通科/専門学科といった層別の人口規模に比例するように必要数の学校を抽出。次に学校内でまとまった人数(35 人)の生徒を抽出する「層化二段抽出法」を採用しています。


6.この方法では、恣意的に学力の高い学校や生徒を抽出することはできません。


7.採点については、事前に採点基準などのマニュアルが用意され、各国4 人の調査・採点担当者が独立して採点を行いますが、国際センターでも独自に用意した各国の言語に堪能な採点者が採点します。


8.これは、4 人の採点者間の採点の一致度・信頼性および国際センターの採点者との一致度・信頼性を対比させるためのもので、採点などを含め国際基準を満たさないと判定された場合は、結果は公表しません。


9.なお、すべて最高値だった得点など、加地教授が疑問視されていた初参加の上海の場合、PISA運営理事会が「客観的な調査を実施することが可能な地域である」と判断して地域参加を認めたもので、しかもその結果は中国全体の結果を示すものではありません。


[コメント]
OECD PISA(15 歳児対象の国際学習到達度調査)についての調査の主催者である中谷好江OECD東京センター所長によるわかりやすい解説、説明。

地域として参加した中国・上海市が3 部門で突然PISA の首位を独占したのでわきおこったPISA の調査方法に対する疑念を払拭するために書き記したものと思われる。

調査結果に疑問をはさむ時間があったら、一日も早く日本は上海や韓国、シンガポール、フィンランドに追いつく努力をすべきと私は思う。

- 2011 年1 月12 日林明夫記-

2012年2月1日水曜日

何のために仕事をするのか(3)

3.社会人になるに当たって考えておかなければならないこと

(1)アジアのよさ、日本のよさ、東京のよさ、江戸川区のよさ、瑞江第三中学校のよさ、友だちのよさ、家族のよさ、そして自分自身のよさとは何かを考えよう。

「よさ」はそのまま素直に認めよう。

「よさ」はどんどん伸ばすように努めよう。


(2)問題点は問題点として解決するように努めよう。


(3)本をたくさん読んで考えよう。

新聞を1日1時間読んで考えよう。(英字新聞も毎日読もう)


(4)「英語」と「コンピューター」は、できれば最大限身につけよう。

これに加えて、「専門分野」(これはという得意分野)を持とう。


(5)世の中には、様々な文化、伝統、ものごとの考え方(価値観)があることを知ろう。


(6)健康第一(身体の健康、心の健康)。「いつまでも若々しく生きる」(中村天風先生)


(7)勉強は一生続けよう。「一生勉強一生青春」(相田みつを先生)

「教育ある人」とは「勉強し続ける人」のこと。


(8)「一所懸命(一つの所で命を懸けるくらいの熱心さで)」ものごとに取り組もう

(足利高校マラソン大会)


(9)「ブルドック魂」

(食いついたら離すな)。(中学校のクラス担任岡田忠治先生)


(10)「自他共栄」

(自分も他人も共に栄えよう)。(中学校の柔道部長椎名弘先生)


(11)「会った人は皆友達」

(一期一会、出会いを大切にしよう)。(京都一燈園石川洋先生)


(12)「持続する志」

(志は高く持ち、一生持ち続けよう)。(小説家大江健三郎先生)

※「躾(しつけ)」を身につけよう。
・美しい立居振舞い(たちいふるまい)
・敬語表現を含む言葉遣(ことばづかい)